10周年を迎えて。共同生活が未来を生きる力を育むチェルシーハウスの魅力

運営者

「チェルシーハウス国分寺」(以下、CH)は、2014年3月にスタートしたシェアハウス型学生寮です。

2024年で10周年を迎え、多様な価値観と主体性を大切にするこの場所は、これまで200名以上の学生たちの成長を支えてきました。

10年という節目にあたり、CHの運営母体であるNPO法人LEGIKA理事長・小崎文恵から、これまでの歩みやCHの魅力、そしてこれから入寮を考える皆さんへ向けたメッセージをお届けします。

PROFILE
LEGIKA理事長 小崎文恵
チェルシーハウス国分寺設立直後からプロジェクトに参画。 以来150を超える寮生と関わり、新たな時代を生き抜く力を育むコミュニティとしての「教育寮」の在り方を追求している。
チェルシーハウス国分寺設立直後からプロジェクトに参画。 以来150を超える寮生と関わり、新たな時代を生き抜く力を育むコミュニティとしての「教育寮」の在り方を追求している。

大学生活+αの経験を。社会で役立つ力を育む学生寮


CHがスタートしたのは、2014年の春のことでした。

私がこの学生寮に関わることを決めた背景には、前職でキャリアカウンセラーとして、若い方々の「初めての転職」をサポートしていた経験があります。

社会に出たばかりの若者たちと向き合う中で、私はあることに気づきました。それは、「大学時代にもっと多様な価値観や現実に触れていれば、社会に出たときに戸惑うことが少なかったのではないか?」ということです。

「学生のうちに、もっと広い視野を持てる場所があれば──」

そんな想いから、CHの理念が生まれました。チェルシーハウスはただの住まいではなく、寮生たちが本音でぶつかり合い、共に成長できる学生寮です。

主体性と多様性を育む学びの場

CHでは、寮生一人ひとりの「主体性」と「多様性」を何より大切にしています。
私たち運営側は細かく口を出すことはありません。

むしろ、できるだけ見守る立場を心がけています。
なぜなら、ここでの暮らしは単なる「生活の場」ではなく、寮生同士がぶつかり合い、試行錯誤しながら「学びの場」だからです。

困ったことがあれば、まずは自分たちで考え、話し合い、解決する。
その経験が、社会に出たときの大きな力になります。

これまでに200名以上の学生がCHを巣立っていきました。
起業した人、大手企業にした人など、目に見える成果を残した人もいます。

でも、それ以上に大切なのは、日々の生活の中で培われた「人と協力する力」「自分で考え、行動する力」──そんな力が、きっと彼らの未来を支えていくと信じています。

10周年を迎えた2024年。
寮生主導で開催したイベントは大盛況!

2024年、10周年を迎えたCHは、寮生たちの絆がさらに深まり、地域とのつながりも活発になった年となりました。

新入寮生ウェルカムパーティー

新たに15名の新入寮生が加わり、満室の中で新年度をスタートしました。

4月13日に開催されたウェルカムパーティーでは、新しい仲間を迎えると同時に、寮生活のルールや理念をしっかりと共有する大切な場となりました。

毎年恒例のこのイベントは、寮生たちが主体となって企画し、運営を担っています。

寮生たちの手で文化を作り、次の世代に引き継ぐということを、改めて実感する時間でした。

地域交流イベント開催に向けてのワークショップ

CHは東京都小平市の閑静な住宅街にあります。

7年前に地域交流イベントを開催しましたが、コロナ禍で地域との関わりが一時的に薄くなっていました。

しかし、寮生たちから「地域の方々に私たちのことを知ってもらいたい」「地域のことをもっと知りたい」という声が上がり、寮生主導のもと、再び地域交流イベントを企画することに。

特に現1〜2年生は、高校時代に行事が縮小・中止された世代です。
そんな彼らと一緒に地域とのつながりを再構築したいと考えた上級生たちが中心となり、企画が進められました。

準備過程では、外部講師を招いてワークショップを実施。
寮生たちはアイデア出しや運営のコツを学びながら、自分たちの意見を形にしていきました。

地域交流イベント「来て!チェルシーに!」

ワークショップを経て、地域交流イベントのタイトルは『来て!チェルシーに!』に決定。

寮生たちは同年6月から準備を進め、12月15日にイベントを開催しました。

当日は地域の方々100名以上が集まり、大盛況。

普段は勉強に使われるスタディルームが、まるで研究所のように変身し、来場者たちはオリジナルスライム作りに夢中になっていました。

全国各地から集まった学生たちが持ち寄った郷土料理に舌鼓を打ち、普段味わえない味を楽しんでいる姿が印象的でした。

さらに、プロ級の似顔絵を描いてもらえるブースなど、寮生の特技を活かした楽しい企画が並び、幅広い年齢層の方々に楽しんでいただけていたと思います。

このイベントを通じて、寮生たちは企画力や運営スキルだけでなく、地域社会との関わり方や協働の大切さも学びました。

これらの経験は、今後の人生において必ず活かされるでしょう。

SNS時代だからこそ、リアルなつながりが大切

大学生にとって東京という大都市は、多くのチャンスを提供してくれる場所です。
その中で、なぜわざわざCHという限られた環境で生活するのでしょうか?

実は、CHでは限られた空間だからこそ、たくさんの経験ができます。

一人ひとりが自分の役割をしっかり理解し、その中で少しずつ成長していく。

それが、CHの魅力の一つだと思います。

保護者の皆さまからも、よくお話を聞かせていただいております。

たとえばある寮生のご家族からは、SNSが普及している時代に、CHでの生活が子どもに「リアルな人付き合い」を教えてくれた、とのご感想をお寄せいただきました。

本人も、最初は親に勧められて入寮したものの、今ではその決断に満足していると話しています。
また、他人を受け入れながら自分の考えを伝える力が、就職先の仕事の本質であることに気づいたとも語ってくれました。

こうしたお話を聞くと、CHでの経験が皆さんの将来にしっかりとつながっていることが感じられ、とても嬉しく思います。

多様な価値観の中で学ぶことが、未来を生き抜く力を育む

これまでの10年を振り返るとさまざまな出来事がありましたが、根底にある「チェルシーハウスの寮生としてのアイデンティティ」は変わらないと感じています。

CHは単なる住まいではなく、40人が共同生活を送りながら、時に衝突し、時に助け合い、本音で語り合う場所です。

そうした日々の中で、寮生たちは人との向き合い方を学び、自ら考えて行動する力を養います。
これは、学校生活やアルバイトだけでは得られない経験です。

これまでの寮生たちは、自ら環境を整え、より良い場所にするために意見を出し合い、時には失敗しながらも前に進んできました。

その積み重ねが、社会で役立つ「生きる力」となっています。

時代は常に変化していますが、お子さんにとってCHで得られる経験の価値は変わりません。
むしろ、社会の変化を先取りするように、多様な価値観を持つ仲間と切磋琢磨できることが、未来を生き抜く力を育むのです。

「我が子が新しい環境に適応できるだろうか」「寮生活で困ることはないだろうか」と不安に感じている保護者の皆さまもいらっしゃるかもしれません。

しかし、その一歩を踏み出すことこそが、お子さんにとって大きな成長の機会となります。

「本音でぶつかり合いながら、みんなで乗り越えていく」

──そんな経験ができるからこそ、卒寮時には自信を持ち、他者に語れる何かを手に入れることができるのです。

チェルシーハウスは、これからも「成長の場」として、その歩みを続けて参ります。

(取材・文/松尾しのぶ)