LEGIKA理事長が語る、アフターコロナ時代における学生寮の展望

関係者LEGIKA理事長 小崎文恵

チェルシーハウス国分寺(以下、チェルシーハウス)はコロナ禍においても、新たな挑戦や自己成長を求める学生の“学生時代にしかできない特別な経験”をサポートしてきました。
そしてアフターコロナの時代に突入し、チェルシーハウスにどのような変化があったのでしょうか。

チェルシーハウス国分寺を運営する、特定非営利活動法人LEGIKAの理事長に、今後の展望を語ってもらいます。

PROFILE
LEGIKA理事長 小崎文恵
チェルシーハウス国分寺設立直後からプロジェクトに参画。 以来150を超える寮生と関わり、新たな時代を生き抜く力を育むコミュニティとしての「教育寮」の在り方を追求している。
チェルシーハウス国分寺設立直後からプロジェクトに参画。 以来150を超える寮生と関わり、新たな時代を生き抜く力を育むコミュニティとしての「教育寮」の在り方を追求している。

コロナ禍で見出された学生寮の新たな魅力

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、チェルシーハウスも一時的に入居率が減少し、感染リスクを懸念する声もありましたが、“学生時代にしかできない特別な経験”を求めて、他者と共に過ごすことを選び入寮する学生が多く見られました。

特に、留学を断念したり学校に行けなかったりという状況下でも学生同士のリアルな交流ができるという点に、シェアハウス型学生寮の新たな魅力が見出されたと考えられます。

▲寮生同士感染対策を徹底して実施された運動会の様子

コロナ禍からアフターコロナへ、学生寮に訪れた変化と未来

コロナ禍初期、チェルシーハウスでは早急に感染対策及び感染症発生時の行動マニュアルを設けました。清掃及び消毒の強化や、共有スペース使用に関するルールの徹底、陽性者の早急な隔離対応など、できうる限りの対策を行っています。

寮生の協力もあって共同生活と感染対策の両立に成功し、クラスターの発生を防ぐことができています。

▲感染症発生時の行動マニュアル

2023年5月8日からは新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したこともあり、従来のインフルエンザ対策と同程度の感染対策を継続しつつ、消毒やマスクに関しては寮生の意思を尊重しています。

2023年11月現在、入居率はコロナ禍前の95.7%に迫る90.5%まで回復し、継続して入寮生が集まっている状況です。

▲コロナ禍前の日常生活を取り戻したリビングの様子

コロナ禍の影響を受けてとは言い難いですが、近年新しい学生寮が続々と新設されています。入居する学生同士がコミュニケーションをとることを想定したシェア型の施設が多く、学生寮全体で“コミュニティ”がトレンドとなっていると言えるでしょう。

また、チェルシーハウス入寮者の傾向として、以前は新しい価値観を積極的に取り入れて周囲に大きな影響を与えるオピニオンリーダータイプの学生が目立っていました。現在は、コンプライアンス意識が高く、傾聴力や調整力に優れた学生が多い印象です。

歴代の寮生によって脈々と受け継がれるチェルシーハウスの在り方

チェルシーハウスが設立して10年が経とうとしていますが、その間脈々と寮生たちがチェルシーハウスに帰属意識を持ち、「自分はチェルシーハウスの寮生だ」と誇りに思い続けてくれていることに、コミュニティとしての成長を感じています。

現寮生同士で外に遊びに行くのはもちろん、卒業後も仲の良い寮生同士で集まるなど、交流が盛んです。

▲卒寮生とホームカミングデーイベントにて

寮生が考える“チェルシーハウスらしさ”は人それぞれですが、やはり「みんなで楽しく過ごす場所である」という意識が強いと感じます。

ただ住むだけであれば、わざわざチェルシーハウスを選ぶ必要はないという気持ちを持っている寮生は本当に多いです。

もちろん、入居したもののコミュニケーションを取らずに部屋に閉じこもる学生もいます。

そんなとき、「もっと交流すればいいのに」と考える寮生もいれば、「誰しもそういう時期はあるから仕方がない」と捉える寮生もいる。
いずれの場合も、一般的なマンションでは抱かない感覚です。

閉じこもっている寮生本人に話を聞くと、「やっぱり出て行かないといけないとは思っているのですが、今は人と顔を合わすのが辛い時期なんです」というコメントが返ってくることもあります。本人も実はわかっているんですよね。

みんなで楽しく過ごすのは大前提で、その楽しさは与えられるものではなく、楽しく過ごすにはどうすれば良いのかを、寮生が自発的に考えて行動することが大切です。

その距離感であったり、感覚が違ったりすることを受け入れて成長できる環境が、チェルシーハウスにはあります。

コンプライアンス意識を育てる重要性

チェルシーハウスはそれぞれの多様性を許容する場所であり、皆の多様性を集めて何か新しいものにしていく場にしたいと常々考えています。

そのために、チェルシーハウスの寮生には「ルールがないと人は人を平等に扱えない」ということを知ってほしいと思っています。ルールという寮生共通の尺度があるからこそ“自由”でいられるのです。

その過程を経てようやく、自分と他人は違うということを許容し、受け入れることができるのではないでしょうか。

これからの社会を生き抜くために必要となる価値観を、チェルシーハウスで育ててほしいと考えています。

▲春のウェルカムパーティーは理事長自身もワークショップに参加

自分磨きに励む学生に刺激を与えられる学生寮

寮生の中には、日々楽しく過ごしているだけでは駄目だと感じている学生もいて、本当はもっとお互いを高め合いたい、インプットの機会が欲しいという声が届いています。

コロナ禍前には外部の方を招いて勉強会などを行っていたのですが、ここ3年間は実施できていない状況です。

今後は寮生のニーズを踏まえつつ、折りを見て学びの場も再始動できればと考えています。

時代と共に学生も変化するものです。

その変化に対応しつつ、自分を高めようと貪欲に頑張っている寮生に対して、刺激を与えられる学生寮であるよう努めてまいります。

チェルシーハウスへの入寮を迷っている方へ

傾向として、チェルシーハウスに入寮する学生は一人っ子、多くても二人という方が多く、兄弟がいないということを意識されているご家庭が多い印象です。

利害関係がない他人同士が一緒に住んで、人間関係にもまれる経験は若い間にしかできないことですので、ぜひ体験していただきたいと思います。

一人暮らしも良いですが、チェルシーハウスに住めば人生のサバイバル力が断然上がります。

共同生活によって培われるコミュニケーション力と、一生を通して付き合える仲間は宝物です。

学生の皆様にはチェルシーハウスを最大限に活用していただき、充実した学生生活を築いてほしいと願っています。

(取材・文/松尾しのぶ)