私たちはシェアハウス型の教育寮「チェルシーハウス国分寺」を運営するだけでなく、学生寮・学生マンションを運営する多くの企業や自治体のご依頼で、解決のサポートをしています。
学生寮選びをする際に、物件のハード面の魅力を比較検討しがちだと思います。
ところが、多くの住まいをサポートする中で、共通する問題があることに気づきました。
そこで、学生寮・学生会館・学生マンションについて、気にすべきポイントを3点に絞って整理したいと思います。
学生寮においてトラブルの発生源がないか
多くの学生が住む学生寮において、トラブルが起きないことはありません。
例えば、夜中に大きな音を出したり、共用設備の利用マナーが悪かったり、ゴミ出しの仕方に問題があったりというものです。
トラブルの性質によっては退去したくなるものもあります。
それだけに学生寮において、重大なトラブルが起きるかどうかは住まいの満足度を大きく左右します。
隣人関係が限られている一般の賃貸物件とは大きく違う点です。
しかも後述するように、年額前払いなどにより途中解約がしづらい契約形態となっているケースが多く、退去のハードルが高くなっています。不愉快な環境に拘束され、楽しかったはずの学生生活を憂鬱なものにしかねません。
トラブルの発生源
住まいのトラブルを深刻化させる原因を追っていくと、寮生同士の信頼関係の問題に必ず行き着きます。
他の寮生のことに無関心で、どういう人が住んでいるかもよく分からない……となれば、騒音や汚損、不適切利用といった問題を容易に引き起こしてしまいます。
逆に他の寮生の顔と名前も一致していて、互いに信頼関係もあると、変なことは心理的にもしづらくなります。協力しながら、より良い住まいにしようという好循環も生まれます。

チェルシーハウス国分寺での、寮生自身の手による生活改善の取り組みの様子。

コミュニティが生きている寮では、自発的な動きが加速していきます。
いくつかの大学では、学生の自主性を重視した学生寮「教育寮」を運営していますが、深刻なトラブルの事例はかなり抑えられているように感じます。
寮運営会社の現場の対応力
管理人常駐であれば、トラブルの対応力が高いというものではありません。現に、口コミサイトには「あの寮長は○○だった」などと不評にあふれています。
運営会社の大方針として、学生同士の信頼関係づくりを重視して、テコ入れを図る姿勢をもっているかが最も大切です。
そのためには、現場の管理人が、注意の紙を貼るといった場当たり的な対応をするのではなく、総合的なコミュニティづくりの視点と権限が必要となります。
そういった知見をしっかり持っている運営会社かを見極める必要があります。
見極めポイント
WEBサイトにおいて、寮生同士の交流を「イベント」としてしか捉えてない記載には注意が必要です。
また、寮生や卒業生のコメントとして、よいコミュニティをつくっているか、自分の言葉で感想を語っているかがポイントです。
設備(ハード)や食事(サービス)のことなどを、住まいの魅力として語っていたり、当たり障りのないコメントをしている住まいには注意が必要です。
寮生の自主性について、運営者がどのような姿勢を持っているか記載されていればポイントが高いです。
逆に書かれていない場合には、特段の方針は持っておらず、一般の賃貸物件における管理会社のようにトラブルの事後処理に留めている可能性があります。
説明会などの場で、寮運営者に対して架空のトラブルケースをぶつけ、反応を見てみることで、会社全体としてトラブル問題を総合的に捉えているかが分かるかと思います。
チェックリスト
- 居住者が、住まいの設備・サービス・機能以外の点を積極的に説明(あり・なし)
- 居住者による独自の表現での感想(あり・なし)
- 居住者と思われる学生による運営者Instagram投稿への「いいね!」(あり・なし)
- RA(レジデント・アシスタント)制度の導入(あり・なし)
- 運営会社の別の寮と説明文の類似度(類似している・類似していない)
- 求人サイトで「学生寮 住み込み」などで運営会社の募集を検索、主な担当業務は施設管理と調理業務の二つか(これのみ・これ以外もある)
- 運営会社が、居住者コミュニティの運営方針を記載(あり・なし)
- 居住者の日常の様子を示す動画の公開(あり・なし)
- 実際の住まいへの内見の受け入れ(あり・なし)
- 当該寮の寮長に会う機会(あり・なし)
- 当該寮の寮長・寮母が高齢か(高齢である・高齢ではない)
- 担当者におけるトラブル未然防止の施策理解(あり・なし)
寮に長い間住んで、嫌にならないか
大学生活というのは、人生を通して見てもアクティブでエネルギッシュな期間であるのは間違いありません。
それだけに、無理にそのエネルギーを抑えるような住まいは、もっと大きな問題を生じさせる可能性があります。
寮の住環境がメンタルにも影響
食事付きの学生マンションなどにおいて、食事のシーンでも一切会話がなく、淡々と毎日が進むという寮も珍しくありません。
リビング系の設備がきれいでも、楽しくみんなで利用しているかは別問題です。
後述するように食事においても決まったものを食べるだけで、大学と住まいの往復だけだと、変化に乏しい日常となりメンタルに悪い影響を及ぼすことがあります。
高校まではご家庭で過ごした方も多くいると思いますが、生活に大きな落差を生じさせることで、中退などの深刻な問題を引き起こすリスクがあります。
自主性に乏しい食生活は満足度に影響
食事は、人間のマインドに大きな影響を与えます。
そのため、軍隊やプロスポーツ選手など、高いプレッシャーを受ける仕事においては、メンタル面も加味した食事づくりが研究され続けています。
単純に栄養価が高い、バランスが良い……というだけではなく、安心できるかとか、気分が盛り上がるようなものがあるかなども重要な要素です。
食事付きの学生寮・学生マンションでは、食事の提供がある一方で、自主的な食事づくりの機会が乏しいものとなります。
例えジャンクな食事であっても、自分でつくるご飯は楽しいものです。
逆に、機械的に与えられた食事というのはどうしても満足度が低くなります。
サッカー日本代表であっても例外でなく、管理栄養士の考えたメニュー通りの献立のままであったときには、徐々に食事量が落ちていったといいます。
(出典:西芳照『サムライブルーの料理人』)
「食事付き」という住まいは、健康的で魅力的に見える一方で、住環境における変化の乏しさに拍車をかける恐れがあるのです。
見極めポイント
食事を単に栄養摂取の一手段ではなく、大学生活を魅力的なものとし、交流を図る場として捉えているか、WEBサイトをチェックしてみましょう。
管理栄養士が献立を考えている、寮母等が調理をしているというのは、どの寮(社員寮であっても)でも一般的なことです。学生に向き合っているからこそのプラスアルファを真剣に捉えているかを見極める必要があります。
寮生のコメントとして、「寮母さんがつくってくれる」「毎日食べられる」といった制度上当たり前のことしか書かれていない場合は要注意です。
チェックリスト
- 寮内での日常的な交流シーンを捉えたSNS投稿(あり・なし)
- InstagramやYouTubeにおいて、「おいしいご飯」だけでない価値への言及(あり・なし)
- 食事の提供シーンにおける娯楽的価値を示す表現(あり・なし)
- 食事を通じた居住者交流イベントを示す記載(あり・なし)
- 運営会社における学生へのメンタルケアへの言及(あり・なし)
賃料以外にコストは潜んでいないか
一般的な賃貸住宅では、賃料・共益費・敷金・礼金・更新料といったコストが発生します。賃料・共益費は月払いというのが一般的です。
ところが学生寮・学生会館・学生マンションでは、耳慣れない料金項目が設定されている場合があります。
さらに支払いタイミングも違っているケースがあります。
高額な入寮費・年間管理費を設定
一般的な学生寮では、月払いの費用(賃料)とは別に、年払いかつ前払いの費用を設定するケースが多く見られます。
例えば、一般的な住まいでいう礼金に当たる「入寮費」がそうです。
しかも入寮費は、月額賃料の4か月分以上に当たる高額な設定がされているケースがあります。
加えて年間管理費の名目で、一年間の管理コストを一括前払いさせ、途中退去時の返却を不可とするするケースがあります。
(月割りで返却に応じるルールの寮もあります)
そのため、一般的な「賃料」のイメージよりもトータルコストが大きく膨らむことがあります。
契約内容によっては途中解約をしても、返ってこない場合があり、留学・休学・退学時の金銭的リスクとなります。
1年ごとに礼金・更新料が設定されるケースも
礼金は一般的には、初回契約時にのみ支払いをするという認識が一般的かと思いますが、基本を1年契約とし、更新時に礼金を再度支払う必要がある寮があります。
また更新料も設定されているケースが多くあります。
東京地区では更新料を取る賃貸住宅が多く、これだけでは珍しいことではないと思われるかもしれません。
しかし、学生寮・学生会館・学生マンションで特異なのは、この更新料がかなり高額であることです。
場合によってはこの更新料が2~3か月分以上となることがあり、賃料以外のコストとして大きな割合を占めることになります。
見極めポイント
WEBサイトや募集サイトに必ず費用項目の記載があります。月額賃料に惑わされずに他の項目をしっかり見てみましょう。
その上で、一年間でどれだけコストがかかるかシミュレーションをしてみましょう。
支払タイミングについては記載が不明確な場合もあるので、不明な場合は質問をしてみましょう。
チェックリスト
- 契約における不利な内容の十分な説明(あり・なし)
- 契約期間(年間単位・1か月単位)
- 入居時支払費用(月額賃料の3倍以上・2~3倍・2倍未満)
- 更新時支払費用(月額賃料の月額賃料の2倍以上・1~3倍・1倍未満・更新時支払なし)
- 年間管理費、更新料、礼金等への十分な説明(あり・なし)
- 年間管理費の返却基準(返却不可・月割りで返却・月額支払可・年間管理費がない)
- 途中解約時のペナルティの明示(違約金あり・違約金なし)
チェルシーハウスとは