【レポート】 チェルシーカフェ2016 vol.2 『日常から考える!ソーシャルデザイン・ワークショップ』 by 佐々木 歳郎(日本デザイン機構)

activity2016.07.04

【レポート】

 

2016年7月3日(日)、日本デザイン機構 事務局長の佐々木 歳郎(ささき としお)さんをチェルシーハウスに招き、今年度第二弾のチェルシーカフェを開催しました。武蔵野美術大学、私立文系、理系大学院生など様々な学生(計19名)に参加頂きました。

 

チェルシーハウスでは、「チェルシーカフェ」と題して、外部の著名な方をお迎えし、学生たちが深く考え、新しい概念や学びに触れる時間を提供しています。

今回は、そのレポートをお送りします。

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登壇者:

佐々木 歳郎(ささき としお)
Landor Associates (米国ブランドマネジメント・コンサルタンシー)にてマーケティング・ディレクター、Nokia Japanコンサルタントを経て、SMART Republic Inc.代表(公益事業企画 / ソーシャルビジネス・マネジメント)。一般社団法人 国土政策研究会 主任研究員。日本デザイン機構 事務局長。

 

チェルシーハウス国分寺 玄関の案内看板(手作り)

 

 

今回のテーマは「日常から考える!ソーシャルデザイン・ワークショップ」

以下の流れで3時間のイベントを行いました。

 

①アイスブレイク

②ソーシャルデザインに関する事前知識のインプット

③実際に手を動かして考えるワークショップ(ここに一番時間を使いました)

④プレゼン(グループ)

⑤学びの振り返りタイム(グループ)

 

まず19名の学生(うち寮外生9名)が4つのテーブルに分かれて座りました。但し、席は自由ではありません。日ごろ話していない寮生や、寮外生との交流を促すため、色違いの付箋をあらかじめランダムに配布され、その色毎にテーブルを分けられました。テーブル毎に似通った仲間がいない方が多様な意見が生まれます。それを学生に実感してもらうための工夫です。

 

学生は、見知らぬ学生と同じテーブルになり、少し緊張していました。

 

その後、アイスブレイクを実施。500円玉より少し大きいくらいの円が全面に描かれたA4用紙を渡され、「その円の中に思いつく限り絵を描いてください。」というお題を。それぞれ3分間おもむろに絵を描きます。円といえば、ということでドラえもんやアンパンマンを描く学生がいたり、繋げて串団子にする学生。中には口の中シリーズとし、いろんな口の中を描いた学生もいました。それをグループ内で共有していくと、いつの間にか、不思議なくらい場が和んでました。

 

クリエイティブな手法によるアイスブレイクをみて、さすがクリエイター集団、と感心しました。

 

場が和んだところで、佐々木さんから「ソーシャルデザインとは?」という概念の話や具体的なソーシャルデザインの事例の話しがありました。

 

【social design】とは【社会をデザインする】こと。

・社会との関係性を通して、問題解決のためのデザインアイデアを考え、かたちにしていく活動

・ 「社会課題を解決」し「新たな価値を創出する」しくみ、のこと

と説明がありました。

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アイスブレイクの後の佐々木さんの講義風景

 

では、「なぜ今ソーシャルデザインか?」それについても、時代背景を踏まえて説明がありました。

『時代は変化し、社会はより多様化し複雑になっている。だからこそ、「共感」を生むようなアイデアやデザインが求められているのです。』と。

 

ソーシャルデザインの事例もわかりやすく(ほとんど海外の事例でしたが(苦笑))、例えば、ハンガリーの「雪国のホームレスに暖かい衣服を寄付するキャンペーン」。クリーニング出したときにハンガーをもらうと思いますが、そのハンガーに「Donate On this hanger old clothes become warmer.」のラベルが貼ってあり、次回利用時に未使用の防寒着を寄付してください、という主旨のPRがされています。実際にこのキャンペーンにより、9万円の費用(ラベル作製費等)のみで、5,000人分の衣服がホームレスに提供されたそうです。

 


ハンガリーの事例(防寒着寄付キャンペーン)

このような事例を踏まえ、佐々木さんは、

『これからは、誰もが「社会をデザイン」する社会。これから行うワークショップで「社会をデザイン」することについて体で感じてほしい』、と笑顔で力強く語りました。

 

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みんな立って、真剣にワークショップを行う様子

 

1時間半かけて、長丁場のワークショップ。

付箋と模造紙とマジックペン用い、①社会の課題や不満を出し合い、②意見をグループ分けし、③解決したいテーマを決め、④それについてアイデアや仕組みを考え、⑤発表します。

途中、佐々木さんや、同行したクリエイティブ関連のアシスタントの方がテーブルを回りながら学生にアドバイスを行ってくれました。

 

学生たちは、初めてのソーシャルデザインの概念と、慣れないワークショップに悪戦苦闘。しかし、自分の考えを言語化し、拡散と収束を知らず知らず繰り返しながら、すべてのグループが発表までたどり着きました(見事でした)。

 

発表では、

「海外訪日観光客が気軽に日本人に質問できるためには?」という課題に対し『「私○○語話せますよ!」ということが伝わるおしゃれなアクセサリーを社会全体で身に着けるといいのでは?』というプレゼンや、

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一つ目のチームのプレゼン風景(実現できたら、日本のおもてなし度も大幅UP??)

 

『「赤ちゃんが電車内などで泣いてしまうと母親が申し訳なく感じてしまう」感情を和らげたい』という課題に対し、『泣き声を「不快」に思うのではなく、「快」と捉えるような仕組みを作ればいいじゃないか』というものがありました。

アイデアも、スマホを泣き声に近づけるとポイントが貯まる「泣き声チャージ」、泣き声に合わせて服の色が変わる「泣き声サイリウム」、泣き顔写真を写真にとり、それがRPGのキャラクターになる「泣き声クエスト」の開発など、かなり具体的でした。

チェルシーハウス イベント

2つ目のチームプレゼン風景(発想の転換がナイスでした)

 

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3つ目のチームプレゼン風景(幼児虐待を社会問題と捉え、解決方法を)

 

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4つ目のチームプレゼン風景(何気ない理系男子のつぶやきが、社会課題を解決する方法に?!)

 

最後の振り返りでは学生から以下のような、たくさんの学びの声がありました。

 

“ワークショップ自体初めてやった、とても難しかったが楽しかった”

“デザイン思考のプロセスが面白かった”“こんな形で、身の回りの不満や課題を解決できる手法を考えられるとはびっくりした”

“周りの意見が自分と異なり、様々な意見を集約する難しさを知った”

“明日から、身の回りで課題を見つけたら、今回学んだやり方でその課題を見つめてみようと思った”

 

これから、世界も日本も益々多様な社会になります。外国籍、世代が離れた人々、意見や立場が異なる人々と共に働いたり、協業したり、生活したりする時代です。

そんな時に、今回のソーシャルデザインの考え方や、一つの目的を共有し意見を集約していくワークショップのプロセスを若いうちに学べたことは大変意義のあることだと思います。

 

 

私たちは、このような取組をこれからも定期的に行って参ります。

これらの活動を通じ、次世代の若者が新しい社会での生き方や働き方を体で学び取ってもらえれば、本望です。

最後になりましたが、佐々木さんはじめ、アシスタントの方々に対し、この場を借りて改めて心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。