【レポート】
スタディツアー続編!
“地域で働く”を学ぶインターンシップ
〜in 島根県江津市〜
チェルシーハウスの有志寮生4名が、島根県江津市にて、2016年2月、それぞれ約1週間の地場産業インターンシップを行いました。
※チェルシーハウス国分寺では、2015年9月12〜15日に、島根県江津市にて地域課題解決型スタディツアーを行いました。
前回のレポートはこちら!
今回参加した寮生4名は、いずれも江津市を訪れるのは初めて。スタディツアーに参加した寮生から江津市での取り組みを聞き、それぞれの思いでインターンシップに参加しました。コーディネートには、前回のスタディツアーと同じく、NPOてごねっと石見さん、ふるさと島根定住財団さん、島根県中小企業団体中央会の皆様にご協力をいただきました。
こちらのレポートでは、瓦や、桑茶製品の製造販売会社さんへのインターンシップに参加した4名の寮生からのレポートを紹介する形で、活動を報告します。
■早稲田大学4年 捧さん
実施場所:株式会社 丸惣 @島根県江津市
実施日時:2月8日(月)〜 2月12日(金)
1日目(2月8日)13:30-17:00
総務部長 森口さんより、会社説明及び石州瓦についてのレクチャー、質疑応答等。その後、大田工場へ移動し見学。帰りには温泉津︎等も案内して頂いた。
「鬼師」という職業があることを知る。/ 1日目のこのとき、自分にとって瓦とは、屋根にあるもの以外空手などで使用する瓦割りや土に埋まっている割れた瓦などのイメージで、そこまで固く強いという印象がなかった。きれいで丈夫な瓦は屋根の上にあり、手元で見れるものはいつも割れたものか割れてしまう瓦ばかりだったからかもしれない。また、昔の登り窯について、写真を見ながらお話を聞いた。その後、実際にその名残がある場所も訪れることができた。登り窯について知らなければ、斜面に大量の瓦があることを謎に思いつつスルーしてしまっていたかもしれない。まちに石州瓦の産業地としての歴史が残っていることが面白い。
2日目(2月9日)7:50-17:00
本社工場にて仕事を体験させて頂いた。7:50のラジオ体操後、製造部長 森口さんから朝礼でご紹介頂き、挨拶。
午前は「てづくり」にて、佐々木 利彦さん、静間さんよりご指導頂き、瓦のとめ部分を作成。10時からは総務部長 森口さんと産業廃棄物センターへ行ったあと、敬川工場へ移動。太陽光発電機や規格外瓦の粉砕作業、1日目に視聴した龍の瓦を作成していた浜松︎さんの作業を見学。昼食後、午後からは近重さんにご指導頂き、「せいけい」にて作業。ゆうえきにつける段階で、瓦を運ぶ作業をしたあと、白地の状態の瓦の選別作業へ。清掃後、終了。
「てづくり」「せいけい」では、細かな部分に最後まで気をつけなければいけず、瓦づくりの意外な繊細さに驚いた。また、長く瓦づくりをしているからこそ習得された技術やコツを、短期間の体験である自分に教えて頂き、近道をしているような気分になった。ご指導頂いた佐々木さんも近重さんも「まだまだ分からないことがある」とおっしゃっていて、長く関われば関わるほど、瓦づくりの広がりや奥深さを感じられるのだろうと思った。うまく表現できないが、自分のような瓦のことをほとんど知らない人は、「そのままの瓦だけを見てそれまで」で、皆さんは「瓦を通してその先を見ているような」感じがした。
3日目(2月10日)7:50-17:00
2日目と同様に本社工場にて作業。7:50のラジオ体操後、朝礼。午前は「てづくり」にて2日目と同じとめ部分を作成。途中、とめをつける為に「てづくり」作業場所へ瓦を運ぶ。その後、少し大きなサイズの石膏型のとめ部分を作成。昼食後、「せいけい」にて選別作業。15時からは、プレスされた瓦を台車に置く作業を行う。清掃後、終了。
「てづくり」では2日目よりも早くとめ部分を作成できるようになった。慣れて少しだけだがリズムを持って作業できているような気がして嬉しかった。少し大きなサイズの石膏型もやらせて頂いたが、小さなサイズではどうにかなっていた(なっていないかもしれないです)部分の作業が、大きなサイズでは失敗してしまった。“最後の最後まで”焦らず細かく丁寧にすることの大切さをひしひしと感じた。ゴールが見えてしまうと急いでしまいがちな自分の性格を注意されたようだった。「せいけい」では、何度も確認して(何度尋ねても丁寧に教えて頂いた)、なんとなくだが上がり下がりの見方が分かるようになってきた。また、置き方ひとつでも瓦の出来に関わってくる話を聞いて、「瓦繊細説」が濃厚になってきた。他にも、15分の休憩時間や昼食の休み方、なかなかの肉体労働であること、など実際に現場に入ってようやく分かることが多くあって勉強になる。休憩時間など、皆さんにとっては日常の風景が私にとっては新鮮で面白く、つい観察してしまう。また、清掃中にシャベルの使い方を褒められ、「小さい頃に雪かきをしてきて良かった」と心底思った。自分にも子どもができたらシャベルの使い方だけは必ず教えようと決めた。
4日目(2月11日)9:30~20:00
石州瓦工業組合 専務理事 佐々木 啓隆さんに江津より西部を案内して頂いた。津和野まで向かう道中、江津や浜田のまち、地理、瓦の話など多くの興味深い話をして頂いた。津和野のまちを歩き、森鴎外記念館などを訪れたあと、グラントワへ移動。壁や屋根など全面に瓦を使用した建物を見学。その後、島根県立大学にて「島根田舎ツーリズム」の報告会に参加。終了後、交流会にて多くの方にご紹介頂いた。
工場での作業体験後だと少しまちの見方が変わって、車で走っていても家の屋根ばかりを見てしまう。特にとめ部分をチェックして、自分のつくった模様と同じものがあるかなーと探してしまった。今まで屋根を見ても、色くらいしか違いがわからなかったが、よく見てみると家ごとに、とめ部分や光の照り具合、模様、形など違う部分が多くあることを知った。違いごとに家の雰囲気にも影響してくることや、当たり前なのだが屋根に多くの瓦が使われているのを見て、実は瓦ってすごく身近なものなのに全然気にしたことなかったなと反省した。また、山の上からまちを見下ろした景観の半分以上を形成しているのは「瓦」であることにもようやく気付けた。空と海の青、山の緑、そして「瓦」の赤茶、これこそが上から見下ろした江津や浜田のまちであった。まちの景観の主要な色として赤茶色があることこそが、石州瓦の産業地としての江津の特徴であると学んだ。また、江津の人は意識しているかどうかは分からないけれども、石州瓦の産業地に暮らす人として地元のものを使い、地元の景観を”自ら”作り出している点がとても羨ましく思った。私の地元・新潟三条は金物のまちであるが、それを使用したからといって景観に現れることはない。瓦のような外にも見える、(静間さんの言葉を借りれば)「芸術品ではない」けれども景観を彩れる地場工業製品は少ないのではないだろうか。(調べてみたい・・・。)
5日目(2月12日)7:45-
7:50のラジオ体操後、朝礼にて簡単な挨拶をさせて頂く。その後、製造部長 森口さんより本社工場の案内をして頂く。「泥から粘土をつくるまで」から「釜へ入れるまで」順序に沿って詳細に説明頂いた。その後、食堂にて報告書作成。
本社工場を改めて見学、森口さんよりお話をお聞きして、「瓦繊細説」は確実になった。粘土づくりから焼き上がりまですべての段階で細かな調整をしなければ、きれいな瓦はつくれないことを学んだ。実際に2日目3日目に工場で細かいチェックや置き方を体験したからこそ、「細かな調整が必要」という言葉も実感することができた。瓦づくりの座学を受けただけでは知ることのできなかった情報・感覚を得ることができてとても貴重で有り難い。また、森口さんからお話を聞くにつれ、「瓦は1枚では成り立たない」ことにようやく気付いた。瓦は基本的には何枚も葺かせて使用するものだからこそ、他とのバランスを考え1枚1枚丁寧に細かく調整していかなければいけないのだ、と瓦製造者の皆さんにとっては当たり前の事実を最後の最後でようやく理解した。お皿や壺なども同じく焼きが必要な工業製品だが、5日前の私はお皿や壺のほうが瓦よりも繊細だ、と思っていた。だが、実際には、瓦も同じように繊細な作業が必要な工業製品であるし、お皿や壺と異なり、単品でよしとしない点においては瓦のほうが繊細なのではないかと感じた。
インターンシップ志望理由
そもそもどうして丸惣さんでインターンシップをしようと思ったのか・・・こんな志望理由を提出しました。
地域に根ざし、地域ならではのものづくりをしている企業に関心があり、丸惣さんを志望致しました。地域に根ざしたものづくり、つまり地場産業は、地域のアイデンティティーでもあり、地域の歴史を語るツールのひとつでもあると思います。したがって、地場産業の石州瓦を製造する丸惣さんを通して、島根や江津という地域を知っていきたいと考えました。
大学でも地域活性化などの活動をしており、地域独自の産業があることは地方にとって大きな武器であることを学びました。そういった地域資源を活用することで、もっと地方を都心に負けないパワー溢れる場所にすることが私の目標で、卒業後の就職先として地元新潟の放送局を選びました。そこでも、地場産業の視点から地域の現状を伝えていきたいと考えています。
ですが、自分自身、「地場産業とは何か」「地域に根ざしものづくりをするとはどういうことか」等、まだまだ実感として分からないことばかりです。したがって、丸惣さんでインターンシップをさせて頂くことで、地域の中での役割や存在意義、地場産業からみた地域の課題などについて少しでも実感として学ぶことができればと考えています。
丸惣さんを通して、地域における地場産業の現状や課題など、地域について考える新たな視点を得ることが今回の私のインターンシップの目的です。島根県を訪れるのは初めてですし、石州瓦の製造を間近で勉強させて頂けることも貴重で、とても嬉しく楽しみにしています。多くの学びを得れるように頑張りますので、何卒宜しくお願い致します。
→ 今春から自分が“新潟”で働くために、地場産業への理解を深め、地域を見る新たな視点を得たかった。
全体を通して
まず、インターンシップを受け入れて頂いた丸惣さん、取締役社長 佐々木 賢一さん、お世話頂いた総務部長 森口さんを始めとして、製造部長 森口さん、「てづくり」の佐々木 利彦さん、「せいけい」の近重さん、石州瓦工業組合 佐々木 啓隆さんには大変感謝しております。また、お名前は省略させて頂きますが、多くの従業員の方によくして頂き大変嬉しかったです。皆様のおかげで、とても充実した、今後にも活用できる実感や気付きが多くあるインターンシップとなりました。誠にありがとうございました。
日本でJRを利用した移動時間が最もかかる場所「島根県江津市」にはこの機会がなければ来ることはない、さらに「瓦」の製造を間近で見れることはないだろう、と希少価値に魅力を感じて訪れました。その意味するところは「この機会の後にはもう訪れることはないだろう」という予感でした。しかし、いま「また江津を訪れたい」「瓦の今後の動きにも注目していきたい」と感じています。
それは、瓦づくりに携わる皆さんの姿やお話から、少しではありますが、瓦をみる視点や、長い時間をかけて見てこられた瓦の奥深さ、瓦を通してみた地域などに触れられたからだと思います。自分だけの視点では得られない実感や気付きを、多くの方と関わる機会を頂いたことで得ることができました。そして、ここで得たものや得た方法はどこでも応用できるものだと感じます。
私は今春から新潟で働きますが、同じように地場産業があります。丸惣さんへ訪れて初めて知りましたが新潟にも「安田瓦」という瓦の産業地があるようです。地域の歴史のなかでどのように地場産業が発展してきたのか、現在それはどのように続いているのか、携わる人一人ひとりの視点を借りることで見つめ考えていきたいと思います。
また、丸惣の皆さんが「瓦」について丁寧に詳しく話をしてくださったのが本当に印象的で、その姿を通して、出来上がった瓦自体は瓦でしかないけれども、出来るまでの過程に広がりや深みがあるのだと感じました。私も、皆さんのように、何かに対して情熱をもって広がりや深みを感じられるレベルまで達せれるように頑張ります。
従業員の皆さんに何度も「こういう縁は大事にしんなさい」と言われました。外から来た者を(ましてやこんなに短期間)笑顔で親切に接してくださって、本当に暖かい気持ちになりました。出会った人を大切にして自分の仕事を進めていく、当たり前のことかもしれませんが、そういった基本的なことが今後働いていく上で何より大事なのかもしれないと感じました。
就職前、大学生として最後の春休みにこのような経験ができたこと、思いを新たにできたこと、とても良かったです。「瓦」をこんなに面白いと感じるとは思いもしませんでした。自分の興味の幅を広げて頂いたことにも感謝します。ありがとうございました!
石州瓦。こんなに近くで見るのは初めて!
江津駅前を紹介!
■法政大学4年 樋田くん
※彼自身のブログで、今回のインターンシップについて振り返っています。こちらをご覧ください!
「ありのまま(を・に)感じる」これが今回の島根でのインターンシップの参加目標であり目的に結びついています。結論から先に述べると、それは達成できたと言っても良いと思います。何故なら、人に恵まれていたことが一番大きくて、地元の方々で現場に入って作業している方は半数以上を占めていて、IターンやUターンで仕事に就かれている方もゼロではなかったため、多様な意見交換をすることができ、地元のいいところや雰囲気も十分に掴み取れました。特に印象的だったことがあった訳ではないとは言いませんが、日常的にあの場で働くことができるのであれば、それは幸せだと思いました。お仕事は決められたことを皆が意欲的に取り組み、助け合い、時には愚痴や不満をこぼすことこそあれ、全然嫌な雰囲気が立ち込めている訳ではなく、日常会話の一部と言ってもいいような、そんな冗談めいた会話も盛り沢山でお仕事がとても楽しかったです。
お仕事の内容が楽だったのか、と言われればそういうことではなく、初日の仕事始めは雨の混じった吹雪吹き荒れる中での桑の苗を植える作業だったので、環境的には最悪のコンディションの中で、風邪を引きそうになりながらも作業を切りのいいところまで踏み切っていたので、この作業が五日間続くのかと考えてしまった初日の午前中は気持ちが沈んでいました。それでも、その時間のミッションをやり通す現場の皆さんの行動を見ていて、何か負けたくない気持ちにさせられました。現場の方々は、10人いる内、定年前の方が半数ほどで、その他は30代や40代の方が数人と10代が一人ということで、若い人は私ともう一人ぐらい。尚更その気持ちは強まりました。
地方では、どこも若い人が減っていて、高齢者が産業を支えているということを聞いていたけれども、まさにその通りの現場であった。けれども、それが悪い状況なのかと言われたら、そんなことは無いと感じました。地元の人は地元が好きで情報を沢山共有してくれましたし、I・Uターンで入ってきた方々は都会のことを知っていてこちらの良さにも気づいているので、地元の方とは違った視点で話しをしてくださる。そんな風に、いつも地元と他の地域を会話で行ったり来たりできるなんて恵まれているな、と素直に思ってしまいました。
五日間、長い様であっという間に日を重ねていき、天気も日ごとに良くなり、お仕事の中での皆さんとの距離も少しずつ縮んでいったことは私自身の気持ちも大きく変えてくれました。必要とされることに喜びを覚えるなんて、生まれてきて何回もあることではないなと感じたので大きな収穫でした。
■一橋大学3年 白井さん
先日、約1週間の島根県江津市の木村窯業所さんでのインターンシップを終え、東京に戻ってきました。木村窯業所さんは、80年以上続く瓦の製造会社ですが、今回私たちが働かせていただいたのは、瓦の製造ラインではなく、他企業から請け負っている自動車部品の製造ラインでした。何の部品になるかは企業秘密ということで、私たちの仕事は、大きな袋に入った1tの黄色い粉末を、ひたすら、4キロの容器に4キロ分つめ、近くにある台車に積んでいくというものでした。このインターンシップで何千個という容器を運んだと思います。
この一見単純な作業をする中で、とても大切なことを学びました。学んだことはたくさんあったのですが、最も心に残ったのは以下の2つです。1つ目は、「相手の状況を想像して、一歩進んだ手助けをする」ということです。粉末を容器に詰めて台車まで運ぶとき、ほんの数メートルの距離なのに、私から容器を受け取って台車に積んでくれる方々がいらっしゃいました。もちろん、作業に不慣れな私がやるよりもその方々がやった方が早い、という理由だったのかもしれませんが、たった数メートルなのに、ときには私が台車のところまで行ってあとは積み上げるだけというときにも、私のかわりに容器を運んでくださったり、積み上げてくだったことにとても感動しました。数メートルしかないのだから、手伝う必要性は高くなかったはずです。私は、数メートルくらい自分で運ぶものだと思っていましたので、手伝ってくれる人がいなかったとしても、何とも思わなかったと思います。手伝わなくてもその人の支障にはならないけど、もし手伝ってくれたらとても感動するし、嬉しいこと、そういう小さな手伝いのオファーをすることはとても大切だと思いました。また、就業先の窯業所と私たちインターン生が宿泊しているホテルの間の送迎を毎日してくださっている従業員の女性がいたのですが、毎日送迎してくださっているだけでもありがたいのに、その方は、仕事が終わってホテルまで戻るときいつも、「コンビニかスーパー寄ろうか?」と聞いてくださいました。私たちには徒歩での移動手段しかないこと、ホテルの徒歩圏内には買い物できる場所がないこと、旅先なので必要最低限のものしか持っていないこと、でも欲しいものがあってもこちらからは頼みにくいこと、などなど私たちの状況、気持ちを想像した上で、いつも聞いてくださったのだと思います。相手のことを思いやった手伝いのオファーはこんなにも嬉しいものなのだと学びました。これからは、自分も人に対してそうありたいと思いました。
学んだことの2つ目は、「伝統工芸品と工業製品の違いは何か?」ということです。今回のインターンシップ中に、木村窯業所さんのご厚意で、隣の市にある瓦会社、亀谷窯業の社長さんのお話を聞く機会がありました。亀谷窯業さんは、瓦製造の技術を応用して、タイルや湯呑や鍋、アクセサリーやキーホルダーまで作っていらっしゃるとても先進的な瓦会社さんです。ここで作られた製品は、東京の高級ホテルや一流レストランなどでも使われています。亀谷窯業の社長さんと話していたときに、聞かれたのが冒頭の質問です。社長さんの答えはこうでした。「伝統工芸品と工業製品の違いは、人々に使われているかどうか。前者はもう一般には使われていなくて、保護してもらう対象となっている。でも瓦はまだ工業製品でありたいと僕は思っているんだよ。」私はこの言葉にモノづくりの本質を見たような気がしました。
初日と最終日の宿泊先yurusatoにて。
■法政大学1年 小林くん
1、背景
今回のインターンシップに応募したのは、”社会で働くこと”、及び”地方で働き、暮らしていくこと”について考える機会が欲しいと思ったからである。特に後者に関しては、普段学んでいる国際政治学や父親の活動、同じ寮の学生の話を受けて関心が高まっており、今回、非常に良いタイミングで勉強させていただいた。
2、職務内容
職務内容に関しては、木村窯業所様との関係もあるので、詳細は省くこととさせていただきたい。書ける範囲で述べると、ある粉末原料をスコップで容器に入れ、台車に乗せるという作業の繰り返しであった。また5日目の午後のみ、瓦の打音検査による製品選別を体験させていただいた。
3、感想
今回関わらせていただいた仕事はいわゆる”肉体労働”であった。しかし、そんな仕事においても学ぶことがたくさんあった。それらを一言でまとめるとすれば、「私はあまりにも地方社会に対して、偏見を持ちすぎていた」ということである。
一点目は都市と地方の仕事についてである。私は都市の仕事といえば、ビジネスやサービス業といった、人を相手にした仕事を思い浮かべる。そうした仕事に関心の高い、周りの学生は、”相手の求めることを読み取る”だとか、論理的な思考法とかに傾倒している節があり、そうした傾向に疑問を持ちながらも、結局は将来必要とされると考えていた。そうしたことを重んじる都市の仕事に対し、地方の農業や工業といった物作りは違ったものであると考えていた。しかし、こうした物作りや肉体労働においても、”相手の求めることを読み取る”ことの重要性はなんら変わらない。そうしたことは、地方の職業においても学ぶことできる。都市と地方の仕事は表面上は違って見えるかもしれないが、本質的な部分は共通しているのだということに気付かされた。
二点目は、地方や都市で生きていくことについてである。参加する前は、地方に暮らす人々は親しみやすく、コミュニティー内の互いの結束が強く、自分の地域のことを第一に考えて、働き、生活をしているとのイメージが強くあった。そうしたイメージを持ったまま、参加期間中、なぜ島根県で暮らし、働いているのか何人かの従業員の方に質問させていただいた。
しかし意外にも、表現が適切かどうかはわからないが、”特に考えていない”人が大半だったのである。さらに、休憩室では会話すら聞こえてこない。これには衝撃を受けた。ただ、今考えればこれは至極当然のことである。地方に生きる人たちも、我々と同じ人間である。話しやすい人もいれば話しにくい人もいる。会話したくないときだってある。島根に生まれ、暮らしてきたのであれば、わざわざ環境を変えなくとも島根で暮らせばよいし、暮らしたいと思うのが自然だろう。つまり、地方の人々も、都市の人々も、なんら変わりないのだ。
今回、地方社会に対するステレオタイプの崩壊を経験させていただいた。これこそが中央と地方の齟齬を生んでいる。これが試行錯誤の続く、地域活性化の現状なのだと実感じた。地方で頑張るだけでなく、都市の我々も努力しなくてはならないのである。
▽インターンシップ2日目の日記を掲載します。
はい、島根に行っております寮生、14号室小林です。2日目の今日は木村窯業所で本格的に仕事をさせていただきました。とは言っても、瓦を製作するのは熟練の経験と技、及び頭を使うことが求められます。普段、最寄駅で1時間ほどの駅員バイトしかしていないお前ごときには百年早いわっ!ということで、正体不明の原料(1tずつ袋分け)を窯で焼くために、一定量の容器(8kg)に入れ、それを台車に移すという作業をひたすらしております。ちなみに汚れても良い服装と事前にお話を受けてましたので、既出の捧さんより作業着を継承した白井さんとは対照的に、中学時代の体育着ジャージに4年の歳月を超えて袖を通し、”職場体験”感満載に職務に励んでおります。
言葉にすると分かりにくいかもしれませんが(後ほど写真をお届けできればなと思います)、本当に辛いです…。一緒の班で仕事をさせていただいた、30代女性の社員さんのお話によると、仕事を始めて一ヶ月で疲労骨折をしてしまったとのこと…。辛い感じが少し伝わってきたでしょうか?わずか1日で、半端じゃない筋肉痛に見舞われた腕を酷使し、Facebookに投稿しているへなちょこが今ここにいるわけですから、これを一カ月、一年と続けたらどうなってしまうのか…。従業員の方々には本当に頭が下がります。
同じ班には私ともう一人の寮生の白井さん、それと前述の30代女性社員さん、最後になんと今年で71歳の男性社員さんがいました。下手したら親子三代レベルの顔ぶれですが、これがまた面白い。特に社員さんお二人の息のあった仕事振り、リズムの良い会話は仕事の辛さを軽減する素晴らしい効果を持っていました!さらに、お二人とも仕事が早い!私が2個の容器に入れ終わって、台車に移そうとすると既に3個目終了。今年二十歳の私、ハンドボールを始めた高校生の妹に体格差を感じ始めてはいましたが、ここまで使えないとは…。30代の女性と70代のおじいちゃんを隣に、己の未熟さを思い知った19歳の春でした…。
初日から感じておりましたが、島根の方は本当に親切で親しみやすいです。東京からのよそ者に挨拶をしてくださったり、江津・都野津について話してくださったり。ホテルから木村窯業所まで、私たちの送り迎えを担当してくださっている社員さんは、それだけでも大変なはずなのに、帰り道になんと5駅離れた町まで車を走らせ、スーパーに連れて行ってくださいました。さらに明日の昼ごはんのためにオススメのお店を予約してくださったとのこと。今回「社会に出て働くこと、及び地域で働き、暮らすこととは一体なんだろうか」という長いスローガンの下、インターンシップに参加させていただいておりますが、その答えの一つになりそうなことに触れることができました。
次回はもう少し、瓦工場のお話をできたらなと思います。初の肉体労働で疲れきっているため、この辺で失礼いたします。では、また!
同じ就業先でインターンシップに参加した白井さんと小林くん
なお、インターン先での業務前後には、てごねっと石見さんが中心となって、江津市の紹介やインターンシップに向けてのオリエンテーション・振り返りなどを行ってくださいました。
今回は寮生の集団として現地に足を運んだわけではありませんが、9月のスタディツアーをきっかけに、こうして現地とつながりを継続できているのは嬉しいです。寮生たちは、その土地の産業で働くという貴重な経験を得ることができました。
就業先の皆様、ふるさと島根定住財団インターンシップサポートデスクの皆様、てごねっと石見の皆様、島根県中小企業団体中央会の皆様、このたびは大変お世話になりました。
また今後ともこのような機会をつくっていきたいと思います!