近年、多くの学生寮や学生マンションが生まれています。
チェルシーハウス国分寺を運営するLEGIKAは、学生寮・学生マンションを運営する多くの企業のご依頼で、問題解決の支援を行っています。
つまり、裏側の事情もよく分かっています。
そこで、一般の学生寮、学生マンションにはどのような問題があるか整理してみたいと思います。
(すべての施設で起きているわけではありません。あくまで一般的な傾向についてのお話です。ご容赦ください。)
学生寮(食事付き学生マンション・学生会館)の問題点
2010年代後半から、食事付きの学生マンション・学生寮が急激に増えています。
各社とも建物を増やす一方で、学生寮の業務経験がなくても対応できる領域(調理・清掃など)に、業務を限定する形で常駐スタッフを置いて対応しています。
裏返していうと、それ以外の仕事については苦手とする方が少なくありません。
さらに、学生寮というビジネスモデルから生じる問題があります。
これら根本的な問題も含めて見てみましょう。
管理者をめぐる問題
- 寮母・管理人(現場担当者)が、調理や清掃担当に留まっているケースが多く、住まいのコミュニティを束ねるプロではない。
- 寮内で発生した人間関係トラブルに対して、現場担当者として問題解決をリードできないことが多い。
- 現場担当者は総じて年齢層が高いケースが多く、今の学生のライフスタイルに対する正しい理解を欠いているケースがある。
- 運営会社において、居住者コミュニティを活性化していくためのノウハウが不足している。
- 管理会社では人手不足が慢性化している。そのため、上質なサービスを目指すというよりも、最低ラインのルーティンな業務に陥りがちである。
- コントロール型の運営スタイルの方が運営者としては楽なため、学生の自主性を重んじたスタイルになりにくい。事務的で杓子定規な対応になりがち。
コストの問題
- 「学生寮」「学生会館」という名称とは裏腹に、賃料水準がそもそも安くない。
- 多額の「年間管理費(要は共益費)」「入寮費、礼金」などの名目で多年度契約により前払いさせるケースが多い。当初予定していない事態(留学、休学等)が起きたときにムダになり、消費者保護の観点で懸念がある。
- 「更新料」「システム利用料」などの名目で、賃料に比べてかなり高額な追加コストが発生するケースが多い。
- 不動産仲介手数料や広告宣伝コスト、大学当局や大学生協との連携にかかる人件費が賃料に上乗せされている。
ライフスタイルへの制約の問題
- 今の学生においてはインターン活動など学外での活動も活発であり、食事付きという制約が、適正なライフスタイルの妨げになることがある。
- お盆・年末年始・学期末などで、帰省したり、旅行をした場合にも食事代が必須でかかってしまう。
根本的な経営上の問題
- 大学生協経由での入居に頼っており、経営努力が十分でないケースがある。
- 規模の大きな親会社や主力の収益事業を別に持つケースが多く、運営会社における創意工夫が十分でないケースがある。
- 4月以降に空室が出ると、途中に入居してくる学生が少なく空きを埋めるのが難しいという学生寮のビジネスモデルの関係から、途中解約を絶対に防ぐような仕組みを取り入れがちである。
- 1年~4年単位で前金でお金をもらうことで、運営会社は手元資金が潤沢になる。新しい寮の建設を加速させ、供給過多になる傾向がある。
住まいのコンセプトを強化した取り組みも徐々に生まれつつあります。
しかしながら、一般の学生寮や食事付き学生マンションの多くは、資金需要の関係から、供給優先で建物建設が進められてきました。
建物オープンが優先で、住まいのコンセプトをどう設計していくかは二の次というのが多いように見えます。
大学直営寮の問題点
大学が学生寮を直接運営するケースも多く見られます。
一方で以下のような問題もあります。
- 寮運営は、大学にとって中心的な事業ではないため、寮運営専業の民間事業者と比べて「教務のおまけ」的な扱いになりがちである。
- 民間事業者とくらべて、大学の担当部門(総務系の部門)にとっては収益を上げるモチベーションが働かない。担当者においては、手間暇をかけて盛り上げていくメリットがない。
- 建物などのハード面にしっかりコストを投入する一方で、運営などのソフト面にコストを入れるという発想になりにくい。
- 民間の寮以上に、高圧的・強権的な寮運営スタイルになりがちで、学生の自主性を尊重したスタイルにならないケースが多い。
- 寮運営を民間の寮運営会社に丸投げしているケースが多く、寮をどのように魅力あるものにするか戦略的な視点が欠けている。
LEGIKAは、収益アップ・コストダウンを繰り返し行っている変わったNPOなのですが、収益性という巨大なプレッシャーの中で、創意工夫が生まれていくことを実感しています。
日本の大学において、効率良く、価値を高めていく仕事ができているのか……というとやや疑問を感じます。そのため、直営寮経営において、事務的で保守的な取り組みに陥ってしまうケースが少なくありません。
ただし、教育寮という枠を掲げて取り組んでいる大学においては、教育的視点において先進的な事例も見られます。
学生マンション(食事無し)の問題点
従来型の学生マンションも健在です。
- 学生同士での交流がない。
- 管理ルールが厳格であるなどして、生活が窮屈になりがち。
- 建物のハード面も質素であることが多く、無機質な生活に陥りがち。住環境に楽しさがない。
- 基本は賃貸マンションなので、家具家電を一式揃える必要があるなど初期費用がかかる。
- 学生寮で挙げた例にあるように、契約形態が途中解約が難しいものとなっており、仮に住まいに不便を感じたり、進路選択に変更が生じたとしても、自由に住まいを変えるなどの対応が難しい。
- 賃貸住宅と比べて圧倒的に割高である。
不動産賃貸事業のセオリーは、貸しっぱなしのままコストをかけないことです。
そのため、運用にコストをかけていくという考えは一般的には起こりづらいです。
学生マンションタイプの住まいにおいて、交流の無さから来る不満には目を向けないことが多いため注意が必要です。
チェルシーハウス国分寺の取り組み
自主性を重んじた生活スタイル
チェルシーハウス国分寺は、住まいの中で学びを得られることを重視しています。
学びを得るために、チェルシーハウス国分寺は、非常に自由度の高い住まいとしています。
このことで、寮生自身がこの住まいの中でどうしていきたいか、常に考え、対処していけるようになっています。
このプロセスを繰り返すことで、自分の資質の特徴や問題点に気付き、自分を変えていく原動力としていきます。
多くの寮生は、ここでの生活にとても満足しており、卒業生インタビューには寮生自身の言葉で、チェルシーハウス国分寺を評価していることがお分かりいただけるでしょう。
大きくコストを抑えた住まい
金額面での違いはどうでしょうか。
他の学生寮では高額な入寮費を入学時に前納する必要があり、電気代・Wi-Fi代が別途となっているケースがあります。
これらの差により、総額では大きな差となっています。
また、この例以外にも「更新料」として月額賃料の3~4か月分相当を納めさせるケースもあります。
自由度の高い契約形態で、自由な学びを
一般的な学生寮や学生マンションでは、一括前納・長期払い・違約金ペナルティありとするケースが多く見られます。
このようなケースでは途中で留学、休学、退学などの事態が生じた場合に、無駄な支払が発生してしまいます。とても貸主に都合のよい契約形態です。
一方のチェルシーハウス国分寺では、通常の賃貸借モデルを取っています。共益費等も月額払いです。
途中で解約をすることは当然想定されてますので、例えば4年次の12月で退去することもできます。
もちろん、留学などの理由で途中で退去することも自由です。
大学生活は1年次の予定通りに進むわけではありません。様々な理由で路線変更を図っていくこともあるでしょう。こうした自由さに応える寮であるべきだと私たちは考えています。
チェルシーハウス国分寺
物件名:チェルシーハウス国分寺
アクセス:JR中央線 国分寺駅より徒歩17分
賃料:相部屋:33,000円、1人部屋:63,000円
共益費:相部屋:18,000円、1人部屋:19,000円
部屋数:27室(2人部屋15室 1人部屋12室)
入居可能人数:42名
居室面積:19㎡(約11帖)
清掃:共用部は清掃スタッフにて実施(週4日程度)
運営団体:特定非営利活動法人LEGIKA