自らも県人寮で4年間過ごしたという大手人材会社の部長・大西さん。
多様性の中で育まれた力と、今社会で求められている2つの力についてお話を伺いました。
「お前はどう思う?」に揉まれ続けた4年間
大学時代、奈良から上京した私は高校の恩師の勧めもあり、県人寮で4年間を過ごしました。
風呂トイレ共同、二人での相部屋。学校も、学部も全くバラバラの1年生から院生まで80名ほどでの集団生活です。飲み会も、買い物も合コンもみんな一緒。
今と違ってプライバシーなんてなくて、寮に二台しかなかった電話の取次ぎで「おーい、この間のコンパでお前が狙っていた○○ちゃんから電話やぞー!」って寮中に響き渡る声で呼ばれたりしていました。
そんな寮で毎晩繰り広げられていたのが、当時TVで流行っていた「朝まで生テレビ」に影響を受けた議論大会です。
毎回様々なテーマに対して「お前はどう思う?」が問われ続けます。
理系も文系も色んなバックグラウンドをもつ1人ひとりが、賛成なのか、反対なのか、なぜそう思うのか自分のポジションを明確に示しながら自分なりの論を持って話すことが求められる。
丸腰では戦えない、口先だけでは太刀打ちできない。しかもテーマは時事問題から哲学的なものまで幅広い。そんな中で自分自身よく揉まれたと思います。
でも、そうやって自分はなんでそう思うのかをトコトンまで考えていくうちに自分の特性や根底にある意志みたいなものに気づくようになる。
さらに相手がなぜそう思うのか、自分と何が違い、何が同じなのかという事がわかるようになる。
多様性を認める、という言葉にするとものすごく簡単ですが、自分を理解し、人を理解するということの真髄をこの4年間でイヤというほど叩き込まれました。
電話論争で得た本質を見極める力
また、こんなこともありました。
私が寮の幹事長を務めていた時に、「電話を各部屋に設置するか否か」という議題が出た時のことです。
「各部屋に電話を引いたら部屋から出てこなくなるのでは?」
「就職活動には絶対必要だろう」
など賛成派、反対派で喧々諤々の議論の中、次第に「ホールに集まることの良さってなんなんだ?」「この寮の価値ってなんなんだ?」ということに議論が及んでいきました。
電話を引く、引かないという事から、進化のために何を捨て、何を残すか、を明らかにする大激論に。
最終的に、多数決で各部屋の電話設置が決まったのですが、そのあとも寮生が集って議論するこの寮の良さは失われることはありませんでした。
あれから30年を経て、私の中で、顧客サービスや組織運営の場面においても、白とも黒とも判断が難しい時は、必ず「何が大切なのか?」に立ち戻ること、そしてそれを関係者間で共通認識を持ってから判断するというこの原体験が生かされています。
今、社会で求められる力とは
職業柄よく、「今ビジネス求められる力とはどんなことですか?」という質問を受けることがあります。
20年にわたって企業の採用に関わる中で、業界も仕事の内容もずいぶん変わってきました。
例えば、昔は「営業」と一言で表されていた仕事も細分化され、フィールドセールス、インサイドセールス、カスタマーサクセスとより一人が狭い領域に特化して業務を担うようになってきています。
これは、一見簡略化、単純化されたように見えますが、実は違います。
より専門性の高め、一人ひとりの創意工夫が求められるようになってきているのです。
常に変化する環境で、細かく現状を見極め、課題を抽出し、改善するというサイクルをいかに自分で作り出せるか。また、その際、周りの人の理解や協力を得られるように働きかけられるか。あらゆる職種でこの変化は起きています。
そこで、やはり大事だなと思うのが「自分の論を持つこと」と「相手の真意を理解すること」です。
AI化、分業化が進み、仕事の中身もどんどん変わる中でも最後は人。人の心を動かし、行動を促す力はこれからますます求められるのではないでしょうか。
そして、この力は間違いなく、人と人との関係の中でしか育まれない力だと思っています。
この歳になって、改めて思うのは、県人寮で24時間人に揉まれ続けた経験と仲間の存在は、私の人生においてものすごく大きな財産となっています。
これから学生生活を送る皆さんにも、ぜひ成長し合える環境、仲間を見つけて欲しいと願っています。
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自主性に根差した仲間たちとの深い関わり合いの中で、
学校では教えてくれない沢山の大切なことを学ぶことができます。