在学中からフリーランスで働くという選択肢はどのようにして生まれたか:ミレニアル世代の価値観を探る

卒寮生井元龍太郎さん

春から多くの若者たちが新社会人として働く準備を進めている時期だ。いわゆる「ゆとり世代」や「さとり世代」、または「ミレニアル世代」と呼ばれる現代の若者たちは、それより上の世代と比べると、働くことや生きかたに対する価値観が大きく異なると言われており、メディアや市場調査ではこの世代に関して様々な報道が成されている

特に入社後3年以内の離職率の高さや、世代間の価値観の違いから生じるマネジメントの難しさなどは近年よく耳にする話題である。

しかし関心の高さとは裏腹に、リアルな若者たちの声を聞くことはあまりないようにも見える。実際のところ、いまの若者たちは「働く」ことについてどんな価値観をもっているのだろうか。

「学生時代に、やりたいことを徹底的に」というコンセプトを掲げる学生寮「チェルシーハウス国分寺」を巣立っていった卒寮生たちに焦点を当てて、彼らの「働く」ことに対する価値観を探るインタビューシリーズを連載する。

きっかけは大学の時に取っていた授業

今回インタビューに応じてくれたのは、チェルシーハウス1期生として2年間を寮生として過ごした後、福井県の鯖江市に移住し、現在はイギリスでフリーランスとして働いている井元龍太郎さんだ。大学院を卒業後、なぜ企業への就職ではなく、フリーランスという選択をしたのか、そして働くということをどのように捉えているかについて話を伺った。

教育学生寮チェルシーハウス 国分寺での様子

― 普段フリーランスとしてどのような仕事をしているのですか?
軸としては、ココナラというオンラインサービスを通じて「情報収集術」のオンライン講座を提供したり、フリーランス養成合宿を開催、オンラインサロンの3つの事業ドメインで仕事をしています。

― そもそも自分でコンテンツをつくってビジネスにしていくということをやり始めたのはどういうきっかけがありましたか?
きっかけは大学の時に取っていた授業です。授業内でチームをつくってビジネスプランを創るという授業内容だったのですが、その時に出てきたアイデアが「ココナラ」のビジネスモデルとほぼ同じでした。時を同じくして、ちょうど「ココナラ」がサービスとして提供され始めたので、これは!と思って登録したのが始まりでしたね。

大学院在学中に目の病気になり、右目が見えなくなる

― サラリーマンではなく、フリーランスとして働くという選択のきっかけは何ですか?
実は大学院在学中に目の病気になり、右目が見えなくなるという出来事が起こりました。元々右耳も難聴を抱えており、当時は卒業後に就職する会社も決まっていたのですが、病気のせいで予定していた時期の卒業が難しくなり、内定も(お断りするか)どうしようかという状況でした。そこで一度大学院を退学して、療養も兼ねて興味もあった移住についてアンテナを貼っていたところに、福井県の鯖江市に無料で半年間住める「ゆるい移住」というプロジェクトを知って参加しました。

― なるほど。具体的に移住して何をしていたのですか?
ゆるい移住期間中はいきなり移住ではなくとにかくお試し、ということで当時は東京にも活動拠点を残していたので、実際に住んでいたのは全6ヶ月の期間のなかで合計1ヶ月ほどで、地方移住体験という感じでした。他のゆるい移住のメンバーでがっつり移住していた人もいたので、その仲間がそこの地域に溶け込んで、それぞれがおもしろいと感じたことを自由にやったり、空き家を開拓したりしていましたね。みんな無料で住めるならまあいっかという感じで集まってきた人たちで、「ゆるい移住」という名前のとおりゆるく住んでいました。 その後、半年間のゆるい移住期間が終わるときに地方移住の可能性を感じて、もっと鯖江にいたいなということで本格的に移住することにしました。

― ゆるい移住中と移住後の生計はどうやって立てていたのですか?
ココナラやオンラインセミナーだけでなく、「ドラキャン」というフリーランス養成合宿も開催していました。空き家を探して住めるようにして、全国からフリーランスに興味のある人たちを募って合宿をしたり。

― 大学生の間に自分で仕事をつくるという経験をすることは、その後の人生においてコンフォートゾーンを飛び出しやすくなる経験なのかなと思います。大学生というリスクヘッジが効く状況において、自分で仕事をつくるという経験は、その後の人生において何か挑戦する時に凄く自信をもてるのではないかなと思います。
そうですね。

― フリーランスという選択肢は一見容易そうに見えますが、実際に自分の顧客が市場のどこにいるのかを見定めて、そこに最適化したサービスを提供し続けるというのはなかなかハードな面もあるので、そこを淡々と当たり前にやっているというのはすごいなと思いますね。
そうですね。僕の場合は始めるのが早くて、まだブルーオーシャンだったときにやり始めたのがラッキーだったなと思います。

― 事業をアップデートしていく時に、どういうことを大切にしていますか?
B to Cビジネスは凄くダイレクトに反応が返ってくるので、相当自分でブラッシュアップしていますよね。講座の提供前と後にひたすらアンケートを取って、とにかくユーザーの声を大事にしていますね。それを基にコンテンツをどんどんブラッシュアップしています。誰よりもココナラの講座への時間は費やしていると思います。

― どのような経緯でイギリスに移住することになったのですか?
付き合っている彼女がイギリスで働くことになったので、一緒に行こうと思ったのが移住の理由です。英語をもっと使えるようにしたいというのはありましたが、特にイギリスにこだわっていたわけではなく、偶然ですね。

― いざ移住するとなるとなかなかハードルが高いところもあると思うのですが、そこをさらっと超えていくところがすごいなと思います。
そうですね。やはり「ゆるい移住」の経験があったので、それと同じノリでした(笑)

― つまりそれは、どこに住んでもインターネットがあれば食っていけるという心境だったのですか?
そうですね。鯖江にいた時もたまに東京へ行くことはありましたが、リモートで必要なことは済んでいたので、これはイギリスにいっても状況としては同じだなと思って。

― いや〜羨ましいですね(笑)イギリスでは普段どのようなコミュニティと関わっていますか?
予想に反して、僕の周りにはあまりフリーランスの人たちはいないですね。普段は日本のことが好きな人達が集まったコミュニティがあるので、そこにちょくちょく顔を出しています。いま住んでいるところはレスターというところで、ロンドンからは1時間くらいのところです。ただしイギリスのEU離脱など、国際関係がビザの問題に関わってくるので、今後も住み続けたいと思っていますが、どうなるかわからないというところはありますね。

組織に所属しているとしても、主体的に好きなことを仕事にしながら生きていきたい

― 率直に聞きますが、井元さんにとって「働く」とはどういうことですか?働くということと、生きるということがイコールになっているという認識ですか?
難しいなあ…(笑)それで言うと、やりたいこととしては生涯フリーランスとして働いていきたいと考えています。

―なるほど。それはつまり、いわゆるサラリーマンとして、組織に所属して働くという生き方に未練はないということでしょうか?
サラリーマンやフリーランスといった形態に限らず、主体的にずっと働き続けたいと考えています。主体的にということが重要ですね。組織に所属しているとしても、主体的に好きなことを仕事にしながら生きていきたいですね。働いて人と関わることを通して、視点が広がることが好きですね。働くということは、相手と自分がいてこそ成り立つので、それを通じて自分の価値観も広がりますし。

― 自分の中で「主体的に納得感をもって働けている」と思えるならば、働き方の形態にはとらわれないということですね。
そうですね。それと権限があるかどうかということも自分にとっては大事です。会社だと組織の中での縛りも生じてくるし。ただ、やはり組織に所属して安定した生活を保証してもらうという上でのトレードオフの関係性が生じてくることももちろん理解できます。

フリーランスを選んだのは、その働き方自体が自分に一番合うスタイルだった

― そうですね。ただしいざフレッシュマンとして働いたときに、いきなり権限をもたせてもらって仕事ができる人もいれば、出来ない人ももちろんいますしね。そこは向き不向きはあるでしょうね。
そうそう。まあフリーランスを選んだのは、その働き方自体が自分に一番合うスタイルだったというのが大きいですね。

― (健康状態が悪く)常にベストな状態を保つことが難しいという中で出てきた最適解がフリーランスだったのかなという印象を受けます。
そうそう。なるべくして(フリーランスという働き方に)なったという感じですね。

― チェルシーハウスというコミュニティでの暮らしというのが、今の井元さんにとってどういう影響を与えましたか?
影響はめちゃくちゃありましたね。メンター制度や魅力的なイベントですね。
あとは程よい規模感も心地よかったです。全員顔と名前が一致する距離感で、コンセプトに惹かれてきたという共通点もあったし。男女比も半々だったことも凄く良かったし、変わった人も多いし。いろんな人がいるからこそ、自分の事を知るきっかけも多く得ました。

―もう一度チェルシーハウスのようなところがあれば住みたいと思いますか?
めっちゃ思いますね。帰省から帰ってきた時なども、本当に家に帰ってきた感じがします。

 

■プロフィール
井元龍太郎 | Imoto Ryutaro
日本No1情報収集術トレーナー/イギリス(レスター)在住。難病をきっかけに独自に編み出した、每日4時間だけ、好きなときに好きな場所で好きな人と好きなことを仕事にして、自分も周りも幸せになる「好き4」を叶える方法と、現代の武器であるITリテラシーを同時に学べるオンラインサロンをやってます。目から鱗と評判です。
ブログ:http://only1.blog.jp/


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