いつかこの寮を訪れるあなたへ

寮生寄稿: 武蔵野美術大学2年 徳山さん

大人は「社会にはいろんな人がいる」「大学にはいろんな人がいる」という。

だから僕たちは「いろんな人がいる」ということを知っている。

 

けれど「いろんな人がいる」ということを 分かる ことは決して多くない。

僕が寮で学んだことはそんな当たり前のようで、少し遠いところにある感覚だった。

 

「あの人は〜大学なんだよね」

「あの人は〜でインターンをしているんだ」

「あの人は趣味で〜をしている」

 

こうしたプロフィール的なことはこの寮で生活する上ではさして重要ではない。

そして人はこうした情報をもとに「いろんな人がいる」というのかもしれない。

どれだけ特殊な経歴や属性を持っているからといって、一緒に暮らしていればそれは日常に変わっていく。むしろこうした日常での関わりが何十倍も大切なものだと思う。

寮生活では他人の悲しさや、喜び、落胆をともに分け合う。 

 

失恋で悲しんでいる奴をラーメンに連れていくこともあれば、 

公園でフリスビーをしながら悩みを聞くこともあるし、 

夜中の3時まで部屋で 愛 について語ることもあった。 

 

この時僕らは、今その瞬間、今の自分が考えたことを喋る。 

それは経歴や属性とも関わりのない固有名としてのその人自身に出会う時間であり、会話をしながら言葉でないものを共有する不思議な時間なのである。 

そこにはまるでかかっている曲に自然とダンスするような心地よい気分がある。 

 

こうした関係の先に初めて「人がいる」のであり「いろんな人がいる」ということが分かると思っている。 

 

その意味で確かにこの寮には「いろんな人がいる」のである。 

 

これからを悩んでいる人へ 

 

僕たちはいろいろな情報に囲まれて生きている。 

経験もない未熟な僕らは、ネガティブな情報に簡単に溺れてしまうだろう。 

そんな沼は奮起して立ち上がる脚を掴んで離さない。 

 

だからこそ 

だからこそ、まだ何も背負っていない僕らは、その身軽さ故に、無茶なことでも、遠慮なく、挑戦してみなくちゃいけない。 

 

それはきっと、大人になって、背負うものができて、体も心もズシリと重くなると、できなくなってしまうことだ。 

 

高校生の僕へ 

 

久しぶり!今日も教室の隅で誰とも喋らずにオセロゲームをしていますか? 

君は大学進学も就職もせず、フリーターとして高校を卒業します。 

そして隙間風に凍える築46年の木造建築に住むことでしょう。周りが着々と自分の進路を進む中で、ベランダに一人、将来について思案している姿が目に浮かびます。 

そしてひょんなことから君は小平のシェアハウスに住むことになるのです。 

周りの友達には「無理だからやめとけ」とか「似合わないよ」と散々な言われようでしたが、君は自分でそこにいく決心をしました。 

 

未来の僕から、これだけは断言できることがあります。 

君がこれから出会う人はとても素晴らしい人ばかりです。素敵で、魅力的で、とても愛おしい人に囲まれることでしょう。あなたの偏屈さと、天邪鬼な面、屈折した精神を笑って付き合ってくれる人たちです。 

自分でもわかっていると思いますが、君はそんなに人に好かれるタイプではありません。 

だから自分と仲良くしてくれる人には溢れんばかりの愛を持って接してください。 

 

高校生の頃と比べて君は立派になりましたよ!成長できました!! 

だからいま暗く、うつむいてても大丈夫!!! 

 

今の僕より