今回インタビューしたのはチェルシーハウス国分寺(以下、チェルシーハウス)居住年数7年、設立以来最長記録を誇る、武蔵野美術大学大学院修士課程2年・ざきおさん。
チェルシーハウスで過ごした7年の間に、ざきおさんが学び成長したこと、そして後輩やこれから入寮する方に伝えたいことについて、お話をうかがいました。
チェルシーハウスなら、必然的に交流が生まれる
── チェルシーハウスに入寮した理由を教えてください。
大学1年の時、同じ学科の同級生がチェルシーハウスでの日常をSNSに投稿していて、とても楽しそうだったんです。 大学やサークルではなくて、家の中で日常的に誰かと交流できるのがいいなと思って入寮を決めました。
── チェルシーハウスに入寮する前は、どちらにお住まいだったのですか?
チェルシーハウスに入寮する前は別の学生寮に半年ほど住んでいました。 一人一部屋で、他の入寮者との交流はほとんどありませんでしたね。
── 別の学生寮では交流がほとんどなかったとのことですが、チェルシーハウスとどういった違いがあるのでしょうか?
チェルシーハウスは交流を目的に入寮する人が多いということもありますが、まず建物の間取りが全然違います。
前に住んでいた寮は6階建てのホテルのような構造で、共有スペースが食堂しかなくて、それも食事の時間にしか利用できませんでした。
チェルシーハウスは2階建てで、自分の部屋以外は全部共有スペースなんです。自由に使えるスペースもあって、必然的に交流が生まれます。
── それは大きな違いですね! 実際に入寮して、感じたことをお聞かせください。
思っていた通り、刺激的で楽しい環境でした。
自分が入学した時は大学1年生の半ばだったので社会生活に関するリテラシーがまだ備わっていなかったのですが、他の大学のこと、インターンやマイナーバイトをやっている人の話、地方のことを聞いているうちに、自分の中で世界が広がっていく感覚を味わいました。
優秀な人が多かったので、色々学ぶことも多かったです。
入寮者同士で地域創生プロジェクトに参加
── チェルシーハウスで特に印象に残っている出来事はありますか?
チェルシーハウスに入寮していた同じ大学の建築学科の先輩に誘われて、「バンブースペースプロジェクト」にボランティアで参加しました。
福岡県福留町の竹林を切り開いて、地域内外の人の交流の場を作ろうという地域創生プロジェクトです。
クラウドファンディングで資金を集めたり、福留町の役所の人たちとミーティングをしたり、公民館で寝泊まりしたり、チェルシーハウスの寮生で出張しての活動は普段と違った面白さがありました。

バンブースペースプロジェクトメンバーとの集合写真。前列右から2番目がざきおさん。
── 入寮者が集まってハウス外のプロジェクトに関わるのは、とても貴重な経験ですね。
あとは大学2、3年生の有志が企画して、年1回の旅行や運動会もあります。
この企画する側が結構楽しいんですよね。 自分達に裁量がありますし、同級生たちと関わって何かできるというのはいい経験になりました。
相部屋でなければ生まれない関係性
── 相部屋にお住まいですが、7年の間に同室の方は何人入れ替わりましたか?
1年間ほど入寮者が決まらなくて実質1人部屋になっている時期もありましたが、4人の方との同室を経験しました。
── 相部屋で過ごしてみていかがでしたか?
相部屋は楽しいですが、やはりプライベートな空間を共有するわけなので一定のストレスが溜まることもあります。
── どういったところが気になりましたか?
生活音だったり大きな足音だったりは、相部屋だと気になります。
多分大学で会うだけの同級生なら、こういうことは気にならない。一緒に住んでみないとわからないことですね。

ざきおさんの部屋での様子
── 相部屋で過ごす上でざきおさんが気をつけていたことはありますか?
洗濯物が臭くならないようにするとか、部屋で食事をして食べ物のにおいをさせないようにするとかですね。
生活する上で付きまとう些細な問題には気を遣っていました。
── 同室の方を思いやる気持ち、今後の人生にも必ず活きると思います。 話は変わって、相部屋でよかったことはありますか?
たまにですが夜寝る直前になって、同室の人と“話しても解決しようがない共通の話題”を話し出して、そこから寝ずに3時間くらい話し込んだことがありました。
そういう1人の人と何時間も深く話し込むことって、大学の友達ともないですし、相部屋でなければなかなかできない経験だと思います。
── 退寮された元同室の方と今もつながりはありますか?
はい、全員と年に1回は会っています。
そんなに頻繁には会わなくても途切れることはない縁というか、結構近況報告しますね。やっぱり普通の友達とは少し違う関係性のように感じます。
── 相部屋で過ごしたからこそ生まれる人間関係は、今後の人生においても貴重ですね。
チェルシーハウスで学んだ“適度な距離感”
── 入寮したことで学べたことはありますか?
いろいろな人に合わせて適度な距離感で接することができるようになったことですね。
たくさんの卒業生を見送って、様々な生き方があると知ることができたのもよかったです。
── 適度な距離感を学ぶに至ったきっかけを教えてください。
一時期キッチンがめちゃくちゃ汚くなったことがあったんです。
初めはお皿を洗わない人が許せなかったんですが、観察しているうちにこういう人間もいるんだと許せるようになりました。
妥協というか、許容というか、自分と違う人がいて当たり前なんだと思えるようになったことが、大きな成長です。
── 他にも、適度な距離感で接するために心がけていることはありますか?
相手に求めすぎないように接すると言いますか、相手が自分にしてくれる対応と同じ程度の対応を自分もする、というように心がけています。
元々は誰にでも親身に対応していたのですが、人間関係で苦労することが多かったんです。
そのことに気づいて、自分に対する相手の対応の熱量を見て、自分もどれだけの熱量を返したらいいかを測るようにしてからは、人間関係で悩むことはなくなりました。
── 相手も自分も思いやって、良好な関係を維持するためのギブアンドテイクですね。社会に出ても通用する大切な考え方だと思います。
居住年数最長記録のざきおさんが退寮までにやりたいこと
── ざきおさんは大学院を卒業すると同時にチェルシーハウスを退寮するとのことですが、それまでにやってみたいことを聞かせてください。
せっかく7年も住んだので、チェルシーで学んだことすべてを後輩にぶつけられるような風刺劇をしてみたいですね。
例年運動会の後にチェルシーハウスに戻って劇をやるんですが、小道具を作ったり演出を考えたり、これが結構楽しいんですよ。 寮生もそういった出し物に馴染みがあるので、今春卒業する寮生何人かでやりたいねって話をしています。
── どのようなことを、後輩のみなさんにお伝えしたいですか?
チェルシーハウスで過ごす時間は楽しすぎると言いますか、同級生と常に一緒にいられて、無駄話してしまうことも多いんですよ。
それが続くと大学の勉強や就活が疎かになって後々痛い目を見るので、自分の成長のための時間を確保しつつ、適度に無駄話を楽しむようにと伝えたいですね。
── 7年という年月の重みを感じます。これから入寮される方へのアドバイスにもなりますね!

昨年度の卒寮生との集合写真。前列中央がざきおさん。
大学に入ったものの物足りなさを感じている人へ
── どんな人にチェルシーハウスをすすめたいですか?
大学に入ったものの物足りなさを感じていたり、漠然と何かしなければいけないと思いつつも何をしていいのかわからなかったりする人に、チェルシーハウスはおすすめです。
めちゃくちゃ刺激になって、求めていたものをストレートに得られると思います。
── 最後に、入寮を検討中の方に一言お願いします!
以前は相部屋(2人部屋)のみでしたが、今は1人部屋も選択できます。
1人部屋でもリビングに出れば他の寮生と交流できるので、チェルシーハウスでの生活を充分楽しめます。
気になっているのなら、刺激を受けに一度入ってみた方がいいと思います。
── ありがとうございました!
(取材・文/松尾しのぶ)